人工言語のための自然言語巡り
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人工言語の作成時に役に立つ自然言語をまとめていく。
なお、基本的にソースはWikipediaである。
※筆者は言語学専攻でもなんでもないどころか、
一般中学生です。
不備があるかもしれませんがご容赦ください。
記述違いがあったらtwitter等でお知らせ下さい。
偉そうな口調なのもご容赦ください。
なお、内容は若干初心者向けになるかもしれません。
発音
日本語
まずは読者にとって最も馴染みやすいであろう日本語。
日本語の「ん」の発音は、
後ろがn・t・dの時はn音、m・p・bの時はm音、k・gの時はŋ音、
母音・半母音・摩擦音・はじき音の時は鼻母音になるという特徴を持つ。
また、「っ」の発音も前後の音によって変わる。
このように、
1つの音素に1つ以上の音素を結びつけたりすると、自然言語らしくなることもある。
また、日本語はアクセントの単位が音節でなくモーラである。
音の単位が音節だけでないことも知っておくと良い。
英語
こちらは日本人に限らず馴染み深い言語であろう。
英語にも特徴的な発音がいくつかある。
まずは、th。以外に欧米語でも英語のthの発音をもつ言語は少ない。
また、英語のrもさほどメジャーな音ではない。
日本人(特に人工言語を作ろうとする人など)は英語を知っているため、
自作の言語にもthや英語rの発音を入れがちなように思えるが、
メジャーな発音でないことは知っておく必要がある。
(入れていけないわけではない。)
フランス語
私は発音が特徴的な欧語と言われれば真っ先にフランス語をあげる。
発音というか発音規則が特徴的なのである。
(実はフランス語以外にも似たような規則を持つ言語はあるのだが、
例として分かりやすいためフランス語を例とする。)
フランス語にはリエゾンというシステムがあり、
語末が子音で次の語頭が母音だった場合、それらが一つの音節になる。
いわゆる連音である。
普通の連音であれば英語等様々な言語に見られるが、
フランス語が特徴的なのは強制的なリエゾンと
語末子音の無音化である。
フランス語は必ずリエゾンが起こる場所が決まっている。
それは人称代名詞と動詞の間など、文法的な決まりでもある。
また、リエゾンが起こらない場合、語末の子音は基本的に発音されないため、
このような発音の変化が起こる。(.は音節区切り)
・mes mains [me.mɛ̃] メメン (私の両手) 子音+子音のためリエゾン無し
・mes amis [me.z‿a.mi] メザミ (私の友人達) 子音+母音のためリエゾン有り
だいぶ異なる発音になっているのがわかるだろう。
人工言語でも、連音システムだけでなく、
プラスアルファで発音規則を作ると、特徴的になるだろう。
読みにくくはなるが。
中国語
中国語の発音で特徴的な点は主に2つ。
1つは声調言語であること。
もう1つは有声音と無声音でなく、有気音と無気音が対立概念であること。
声調とはアクセントの一種で、その中でも中国語は曲線声調という声調だ。
曲線声調とは1音節内で音の高低が変わる声調。
例えば、mā・má・mǎ・mà・ma(声調なし)という声調の違う4つの語は全て違う意味で、
māは高く、máは下から上がるように、mǎは低く、màは上から下がるように発音される。
(良く知りたい人は調べて音声を聞いて見ると良い。)
有気音と無気音とは日本語では区別されない発音概念で、
子音発音時に息が出ているかどうか(帯気しているかどうか)で区別される。
例えばdaは息を出さず「だー」のように発音され、
taは息を出して「たはー」のように発音される。
印欧祖語などでは有声音も有気音もどちらも存在していたので、
混在させてみても良いと思う。
文字
ラテン文字
英語などで使われるラテン文字はアルファベットという文字体系だ。
アルファベットは音素文字で、子音母音両方とも、1つの文字で表す。
あまり特徴のない文字にも思えるが、やはり読みやすさ考えれば、
人工言語でもアルファベットを選択するのがオーソドックスとは言える。
アラビア文字
アラビア文字は日本人から見ると何を書いているかわからない筆記体のような文字だが、
以外に体系的である。
アラビア文字には大きく分けると3つの特徴があると思う。
1つは右から左に書くことで、
もう1つはアブジャドという文字体系であること、
最後に1つの文字に3つの変化形があることだ。
まず、アラビア文字は右から左に書き進めていく。
これはあまり珍しい特徴ではなく、昔の日本でも漢字を右から左に書いていたことは有名だろう。
次に、アブジャドだ。
アブジャドというのは、基本的に子音のみを書き表す文字体系である。
アラビア文字では子音に加えて長母音記号も書き表す。
例えばアラビア語の転写で、
ktb(実際には右から書く。また、文脈によってどの母音を挿入するかは変わる)と書くと、
katabaと読み、「(彼は)書いた」という意味になる。
人工言語においては読みづらくはなるが、
アブジャドを採用するというのも、特徴的で面白いと思う。
1つの文字に3つの変化形がある、
というのは英語の筆記体が体系化されたものと思えば簡単だろうか。
アラビア文字には頭字・中字・尾字がある。
例えばbの音を表すバーという文字は1字だけだと、
ب
という風になるが、単語の最初にくると頭字形になり、
بــ
単語の最中だと中字形になり、
ــبــ
単語の最後だと尾字形で、
ــب
となる。
単語のどこにくるかで文字の形が変わるということだ。
先の例で出てきたktbをアラビア文字で書くと、
كتب
となる。
字形が変わることのメリットとしては、
何としても手書きがしやすいことだと思う。
今まで書いてきた文字の中で書きやすいと思ったものは、
幻字とアラビア文字くらいだ。
ただ、全て繋がってしまうと読みづらい、
字形を覚えるのが大変などデメリットもあるので、
そこは作者の選択だろう。
平仮名・片仮名
典型的な音節文字でかつ分かりやすいものが平仮名・片仮名しか見つからなかった。
音節文字というのは基本的に、
音節(日本語でいうと母音+子音もしくは母音)が1つの文字に対応している文字体系だ。
日本語話者ならばわかると思うので詳しい解説は割愛するが、
意外にも音節文字というのは珍しいらしい。
(といっても歴史的には楔形文字なども音節文字であった。)
デーヴァナーガリー文字
インドでヒンディー語などを書き表す文字がデーヴァナーガリー文字だ。
デーヴァナーガリー文字は、
音素文字と音節文字の中間とも言われるアブギダという文字体系だ。
アブギダはそれ単体だと音素文字のように見えるが、補助記号をつけてアブジャドのように表す。
例えば、デーヴァナーガリー文字のकはそれ単体だとkaという音を表す。
しかし、केとなるとke、कुとなるとku、किとなるとki、कोとなるとkoの音を表す。
アブギダにはいくつかの利点があると思う。
まず、音節文字のように文字が多くない分覚えるのが楽。
アブジャドのように読みづらくもならないし、
アルファベットのように長くならない。
ただ人工言語の制作上は、フォントを作るのが難しかったり、
単純にアルファベットの方が読みやすいといった理由から、
必ずしもアブギダが良いとは限らない。
文法 〜 語順編
日本語
英語の文法を学習すると日本語の文法が変なのではないかと思えてくるときがある。
そんなことはない。
実は日本語のSOV(主語・目的語・動詞)という語順は、
世界の言語で一番多い語順である。
しかし、多いというだけでヨーロッパなどの経済的に力がある国の言語であるわけでは無いので、
メジャーと言われる言語の中では日本語と韓国語ぐらいかもしれない。
人工世界の中で言語をたくさん作っている場合は、
SOVの言語を最も多く(5割強から6割に)するのが自然である。
SOVの言語にあることが多い特徴は以下。
- 動詞の後に助動詞を置く
- 名詞の前に形容詞を置く
- 後置詞を用いる
- 格標識がある
- 副詞は時間、様態、場所の順に並ぶ
- 語順が比較的自由
- 疑問詞を移動しない
英語
SOVが世界で一番多いと言っても、SVOがその次に多い。
やはり英語のような語順の言葉も多いのだ。
ヨーロッパの言語はほぼSVOで、その他東南アジアの言語もSVOが多いらしい。
ただ個人的に思うのは、SOV語順である言語は言語系統に関係なくという感じがするが、
SVO言語は印欧語族とシナ・チベット語族が大半を占めている。
それらの語族の言語がいかに多いかがわかるだろう。
やはり、言語は通時的に作らなければならないようだ。
SVOの言語にあることが多い特徴は以下。
- 動詞の前に助動詞を置く
- 前置詞を用いる
- 格標識がない
- 副詞は場所、様態、時間の順に並ぶ
- 語順が比較的固定している
ドイツ語
ドイツ語はSOVとSVOの中間のようなV2語順の言語だ。
基本的にV2語順の言語では、平叙文の2番目の句が動詞または助動詞になる。
ドイツ語は日本語と同じSOVなので次のように文を組み立てたくなる。
ich(私は) dieses(この) Buch(本を) lese(読む)
しかし、2句目は動詞と決まっているのでleseがichの次に来る。
Ich lese dieses Buch.
ただし助動詞が出て来るとまた変わって来るため、
詳しく知りたい方はドイツ語文法を調べて見ることをお勧めする。
SVOやSOVのような固定語順にとらわれないこともときには必要だ。
アイルランド語
いわゆるアイルランド語とはアイルランドで話されるゲール語だ。
印欧語族の中でもケルト語派に属しているため、基本語順がVSOとなっている。
VSO語順はSVOの次に多いと言いつつも、10%程度しか存在しないため、
少数といえば少数である。
アイルランド語は
Chonaic(見た) mé(私は) é(彼を).
のように典型的なVSO語順だ。
アラビア語のように方言や話者によって変わったりはしないらしい。
(アラビア語はフスハー、つまり文語ではVSOだが、
英語等の影響でSVO化している方言もあるらしい。)
ラテン語
ラテン語の散文は基本的にSOV語順になりやすいものの、
とても語順が自由である。
というのも、格が屈折によって明確に表されるため、
語順がどうでも意味が通じるのである。
さらに、形容詞さえも格変化するため、
修飾語(形容詞)と被修飾語(名詞)が遠く離れていても許容される。
ここまで来るともはや、人工言語らしいとさえ思えてくる。
文法 〜 形態論分類編
中国語
まずは典型的な孤立語から。
孤立語というのは、屈折や膠着といった形態論的手段を用いない言語だ。
英語のようなI my me mineといった曲用や、
日本語のてにをはに当たる表現がない。
また、時制による活用もない。
中国語の例文を示すと以下のようになる。
昨天我去了图书馆。(昨日、私は図書館へ行った。)
今天我去图书馆。(今日、私は図書館へ行く。)
明天我要去图书馆。(明日、私は図書館に行くつもりだ。)
行くという意味の去が活用していないのがわかる。
(了は完了アスペクトを表す助詞で、要は意識を表す助動詞なので活用とは異なる。)
格も語順によってのみ区別する。
イタリア語
イタリア語に限らず多くのヨーロッパの言語は屈折語である。
別にフランス語やドイツ語でも良いのだが、
今まで出ていないイタリア語で説明する。
屈折語は英語で言うsing sang sungのように、
単語が分割できない形に変化して(厳密には変化することがある)、格や時制を表す言語だ。
(日本語は彼/が、彼/はのように分割できるので屈折語ではない。)
しかし、イタリア語は名詞の格変化は失っている。
SVO語順の特徴の格標識がないに当てはまっている。
しかし、性や数によって曲用、また動詞は法や時制で活用する。
屈折語のメリットには1文あたりの単語数が少なくなると言うのがあるが、
やはり覚えることが多いと言うデメリットはある。
また屈折語の場合、あまり規則性の高い屈折にしてしまうと、
自然言語らしくなくなると言う問題も起こる。
このような面から、屈折語の人工言語は制作も運用も難しいと言える。
トルコ語
トルコ語は日本語と同じように典型的な膠着語である。
日本語で説明しても良かったが、知っている言語ばかりではつまらないだろう。
膠着語は基本となる語に付属語がついて格や時制といった文法的な性質を示す。
トルコ語の例文を示す。
Ben(私) dün(昨日) mektubu(手紙を) yazdım(書いた).
mektubが手紙という意味の名詞で、
そこにuという日本語の「を」に当たる付属語がついている。
yazdımというのも、「書く」を表すyazmakの語幹yazに過去形の接辞dıと、
主語が一人称単数なのを示すmという接辞がついた動詞だ。
人工言語の観点では、制作も運用も楽だが、1文が長くなる傾向もある。
英語
度々出て来るが、英語である。
英語はI my me mineのような不規則変化があるから、一般に屈折語と言われているが、
語順を大変重視するため、孤立語的性質を持っていると言える。
ここで言えるのは、言語形態論の屈折語や孤立語というのは、
はっきりした分類ではないということだ。
むしろ性質であると言える。
膠着語と言われる日本語ですら、サ行変格活用やカ行変格活用があることから、
屈折語的性質も持っていると言える。
語法
造語